経済学入門III:マクロ経済学
Stephen J. Turnbull
筑波大学システム情報研究科准教授
2010年12月6日(月)
社会工学類 総合科目A
2010年度3学期
なぜマクロ経済学を学べなければならない?
- あなたの生活への影響
- 国民の一人として投票への責任
アメリカと日本の GDP 比較 1955-2007
経済学って
- 経済学は「希少な資源の分配」を分析する
- 資源は基本的に「使えるもの」
- 「希少」は「ほしがる人がまだいる」という状況
- 「分配」は「使い方を決める」と意味する
- 経済学は科学的な学問
マクロ経済学の特徴:I
「ストック」vs.「フロー」
- 「蓄え」、「残高」対「循環」、「流量」
- 数学上:「積分」対「微分」、積分の関係である
- 経済に「財産」対「所得」
- たとえば「現金がないので…」って、貧乏?破綻?
- 集合(量、財)の解釈が難しい
- 「自動車」と「散髪」をあわせると、数え方とは?
- GDPの代表的な財とは?(無い!)
マクロ経済学の特徴:II
計量の問題
- The Ferrari is a lot of car!(「大きい」と違う)
- Man is the measure of all things
- 人間を基準にして測られるものであるということ
- 人間のニーズにより違う種類でも比較できる
マクロ経済学の特徴:III
- 国民の生活のために一番活躍できる学問だろう
- しかし、一人一人は守らない
- 「国民」は集合だが、一人一人にニーズが違う
- 平均がよい場合でも最悪がひどいだろう
- 再分配:一人を助けるためにもう一人が犠牲にーたとえ、前原大臣が経済の1.5%(つまり、農業)を守るために98.5%(そのほかの産業)を犠牲にすべき?
- 政策を決めて実現することには経済学より政治
マクロ経済的で分析できる問題
- 「不景気」の様子と国民への影響
- 経済成長
- 貨幣の統合(欧州のユーロなど)
- 為替レートの管理
- 貿易のバランス(TPP、自由貿易地域)
- それぞれの問題へのふさわしい対策
ミクロ経済学との関係
- 集合財の量(付加価値総計)を計るには価格が必要
- ミクロは「価値」と「価格」との関係を調べる
- マクロは価格を計算の係数として使用
- 財の流れ
- 一方、ミクロは個人や企業の決定を分析し、説明する:流れを生じる
- 意思決定により流れが大きく変動する
- 一方、マクロは市場・産業・国レベルで流れそのものを分析
- マクロ経済にはミクロ経済学的な根拠が必要
奇跡的な経済成長
- 本当に奇跡?
- いいえ。ただし、これから日本が急成長状況に戻ることは期待すべきではない!
- アメリカの経済歴史を見ると
- 80年間前の金融危機・長期的不況は目立つ
- 戦争は回復を起こし、そして朝鮮戦争で「ブーム」になった(1960代半ばまで)
- その他の期間は年度ごと1.8%成長率を挙げた
- 7%になれた日本経済はこれからどうなるの?
マクロ経済学にふさわしい方法
- モデルを利用
- モデルの構成要素
- 因果関係をはかる
- 異質な変数を除外する
- 『抽象』する
- 注意:分析が思った結果に導かれない場合
- そのときにモデルの見直ししかない。ただし、どれほど小さな変更でも、分析はーからやり直さなければならない
簡単なマクロ経済学的モデル
- 経済成長と景気との関係とは?
- 「良い景気」は生産水準が高いことに繋ぐ
- 生産の30%が投資(資本財の生産)
- 1/3は古い資本の入りかえ
- 生産の20%は生産の拡大(=経済成長)のため
- これから消費が1%減少になると経済成長率が1%に
- 普通の生産拡大の50%なので投資額を半分にすると予定した1%の成長が支えられる
- つまり、総生産に対する需要の11%カットが考えられる!!大変です
モデルの考察
- モデルの因果関係は「生産拡大→投資」
- 本当に正しくない:資本は数年使えるので来年度か再来年度の経済回復を期待して投資するだろう
- 現実は
- 今年の増加分だけとすると総生産の0.2%投資減少
- 合わせて消費の減少の1.2倍になる
- 回復が不確実ので総生産量の減少は0.4〜2.2%
- より正確な分析には将来への期待を入れるべき
- これはaccelerator modelの例という
マクロで使うデータ:総合量のデータ
- 各々の個人ではなく、国民の総計または平均を測定する
- 全ての人の分が入っている
- ほとんどの人の各財の量が同じ方向に
- 皆の個人的量が一緒に動く場合だけに統合されたデータは「マクロデータ」という
- 同じようにそれぞれの財の量ではなくその「総計」を取り扱う
- 財の価格比率が激しく動かなく、
- ほとんどの財の量が同じ動きを表す時に
- いくつかの財の総合量に統合されたデータは「マクロデータ」という
量的マクロデータGDP
- GDP(国内総生産量)は国民の皆がそれぞれ全ての財の量の合計
- 「量」はリトル・キログラムなどで測定してはいけない
- 経済的な計量法は「価値により」(Man is the measure …)
- 価値は価格で測る(「なぜできるか」とは、ミクロ経済学が説明してくれる)
- 二重計算はいけない
- 最終財だけを数えてもよい
- 付加価値で計算してもよい